住みごこちは何で決まる?|重要な床の選び方

住みごこちで肝心なのは床

家の中で体がもっとも触れている建材は何か、考えたことがあるだろうか?

手であれば、答えに悩むこととなるが、体全体ということになれば、答えやすい。

 

それは床。

 

そして居心地にも欠かせないものであることは、想像にたやすい。

冷たい、暖かい、濡れてる、乾いている、柔らかい、硬い……

大事な感触は、足元からくると言っても過言ではない。

 

ヒートショックと呼ばれる、心臓のしっかんは、特に冬の風呂場でおこることが多く

それは温度差が激しいためと言われているが、昔ながらのタイルの風呂場はもっとも危険。

 

足元からくる冷たさによって、血圧の急変動を引き起こすそうだ。

 

言わば、足裏はセンサーになっている。

となると、家づくりの中で、床選びはもっとも大切なミッションだ。

 

 

 

昨年末にようやく完成した、新国立競技場設計者の隈研吾氏もこのように語っている。

「空間を構成する天井、壁、床、という要素のうち最も身体に密接に繫がっているのは床です。なぜなら床は、重力がある限り人間は触れざるを得ません。人間は重力に逆らえません。自ずと、人間にとって床は外部とのインターフェースにあたり、人間が、自身で直接交渉できるのが床であるということになるわけです。季節ごとに床から感じる温度の違いや、床の素材そのものがもつ硬さや感触といったものは人間の心理に大きな影響を与えています。そのことから、私の設計でももっとも床を重要視しているといっても言いすぎではないでしょう。」

参考:フローリング総合研究所

 

忘れないマンションの床の感覚

多くの人がそうであるように、僕も社会人になり、そして結婚してからも長女が生まれて2歳になるまでの数年は、賃貸マンションに暮らしていた。

そのときの感覚は、今でも覚えている。

 

当時は最上階の3階に住んでいて、南北に抜ける間取りは風通しがよく、夏でもほとんどエアコンをつけない生活をしていた。

隣人の物音が気になること以外に、もっとも嫌だったのは、湿気でベトベトする感触の床だった。

 

冬は冬で、カチカチでとにかくひんやりとして冷たく、裸になるとブルッとする。

体の熱が足元から奪われていくのを、体感していた。

冷たさから逃れるように脱いだものをその場で踏みつけて、洗い場に急行し、シャワーの栓を開けていた。

 

さらには、素材は硬く感じるのに、なんかフカフカしているというか、しなるようなリビングの歩きごこち。

音も下にスコーンやドンドンと抜ける感じがして、気を遣って生活していた。

 

もう25年も前の話なので、マンションとはいえ床の構造や、断熱性もよくなかっただろう。

でも、今でも新築やリフォームの相談に訪れるご家族に話を聞けば、多くの方が仮住まいやご実家で同じような体験をしている。

 

ベトベトとカチカチの理由

それは表面の塗装により、木がもつ本来の機能が損なわれているためだ。

世の中に出回っている床材の多くが、木のニセモノに近い。もしくはシートばりの本物のニセモノも出回っている。その精巧さには、驚かされるほど。

 

ただそれが、悪いと言っているわけではない。

表情や機能のよしあしを決めるのは、使う人のものだから。

 

自分のベストが、他人のベストとは限らない。むしろ違うことが多い。

僕たちに無理じいはできない。

このブログを参考にご自分のベストを見つけていただければ良いと思う。

 

少なくとも、一見して木の床だとしても、表面が樹脂系塗料とか何かで、しっかりコーティングしてあれば、

素材感や質感、ぬくもりやニオイと言った五感で感じるものは、間違いなく本来の木から遠のいていく。

 

無垢の木は、無数のアナが空いていて、湿気が高いときは表面に水分が付着するのではなく、体内にためてくれる。

 

*さし絵、お絵かき中です…

 

だからベトベトせずに爽やかに感じる。

何もしていないただの木材に、実際に少し水をたらすと、スーっと引くように染み込んでいく。これが、その原理だ。

また空気もそのアナにため込んでくれるので、急激な温度変化をもたらさない。ヒヤッとする感覚が少ない。

 

樹脂やガラスは、体の中に空気や水分をためることはなく、表面に残る。

だから手に持てば、冷たく感じる。

夏の足裏では、ベトベトに感じるのだ。

 

 

 

 

商社やメーカーが売っている既製品と呼ぶフローリングやフロア材のほとんどは、表面にコーティングしてあります。

大手ほど、しっかりコーティングされるように製品工程が向いていくのは間違いない。

それはクレームをさけるために他ならない。

 

 

それが、床のベトベトとカチカチの理由だ。

 

 

フカフカやスコーンの理由

フカフカやスコーンは、前述したベトベトとカチカチとは、また別の理由になる。

 

それは、床の作り方と床材の厚みの問題。

もちろんだが、床材は厚ければ厚いほど、音が抜ける感覚やしなる感じはなくなる。

 

家づくりを考えているときに、

「床材と下地(捨てばり)を合わせると、厚みはいくつですか?」

と工務店に質問してみると良いだろう。

 

床材は12㍉から30㍉ぐらいまでのものが使われている。

下地は12㍉から28㍉。

両方を合わせると、薄くて24㍉、厚くて60㍉。

フカフカやスコーンは、あきらかに厚みが薄いときに感じる。

 

経験値から言うと、24㍉から36㍉の間では、感じることになるだろう。

 

素材・製法よってまったく感触も扱いも違う

どんなモノにも、良いところも悪いところもある。

それを知って、選択することが後悔しない秘訣。

主観ですが、まとめてみました。

 

 おすすめのつくりと素材

イエローチェアハウス は以前、柔床(じゅうしょう・根太工法)と呼ぶ床の作り方をしていたが、長期優良住宅への対応を考慮して、剛床(ごうしょう・剛床工法)に変えた。

 

ポイントは根太をやめて、梁、大引を正方形に組んだこと。

そのために下地も床材も厚みを増した。

 

実際の現場の様子。

ブルーの断熱材の間に見えるのが、大引きと呼ぶ床を支える木材。

それを90㌢角に組む。

 

その後、24㍉の構造用合板を敷く。

 

そしてその上に床材。

床材は、30㍉の杉。

オリジナルの杉フローリング。

 

貼った断面はこんな感じ。

上から、30㍉の杉フローリング。

ミルフィーユのように見えている部分は24㍉の構造用合板。

その下の木材が梁(もしくは大引)。

床下地と床材の合計54㍉がイエローチェアハウス の標準仕様。

しっかりとした踏みごこちと、柔らかな肌触りを兼ねそなえた、床の完成。

 

夏も冬も、素足でいられる。

(僕の奥さんの足なので、あら探ししないでくださいね。)

 

 

というより、靴下は脱ぎたくなるようだ。

 

 

 

そして暴れてもびくともしない。

 

 

 

イエローチェアハウス では、八溝山の杉を特別に、杉フローリングとして製材してもらっている。

 

市場には出回っていません。

僕自身が惚れ込んで、製材工場に直にお願いにお願いを重ねて、10年前に口説き落とした。それ以来、浮気したことはない。

なので、言えないほど安価に仕入れさせていただいている。

 

杉,フローリング,裸足

 

フローリングメーカーには類似品(床厚がうすい)を探し出すことができるが、びっくりするほど高額。

流通量も少ないので、仕方がないのか。それとも、中間に流通業者が多すぎるのか。

いずれにしてもそれでは、標準仕様にすることは難しい。

 

しかし、杉フローリングにはデメリットもあるのは確か。

最大のデメリットは、表面が柔らかくキズがつきやすいこと。

 

仕上げの塗装が大事

床材の仕上げに使う塗料は、もっとも大事な要素です。

 

最後にオイルペイントのような塗料、高級感を出しキズをふせぐためにクリヤーやらを使ってしまっては、冒頭のニセモノに近い床に仕上がってしまう。

 

無垢フローリングを選択したならば、自然塗料を使うべき。

ところが、ここにも問題が秘めている。

 

現場で床を張り上げた後に着色しようとしても、きれいに仕上げることはめちゃくちゃ難しい。

 

だから、「無垢フローリングは生地仕上げ(きじしあげ)がいいですよ。」

と、無塗装やクリヤーでの仕上げをすすめられることが多いはず。

 

“無垢フローリング” で検索してみれば分かります。

圧倒的に着色していないものが多い。

 

でもうちのように建物はヨーロピアンスタイルが多いのに、杉の無垢フローリングを着色しないままだとすると、そこだけ和風の印象になってしまう。

それではまずい……。

 

お施主様にしかられ、失敗と苦労を重ねて、最終的にはささやかながら塗装工場を持つことになった。

ここで金子さん(塗装職人)に塗ってもらっている。

 

しっかり検品して

 

 

 

 

 

 

 

自分たちで現場に運ぶ。

 

これが品質を維持する最善の方法。

 

使う塗料は、自然塗料一択。

乾くと、匂いがしないどころか、木の香りがよみがえる。

 

実際に、先日もお施主様から「1年経っても木の香りがしてますよ。」と言われた。

 

「国産材のフローリングは、キズがつきやすいです。ですが、それを補ってなお余る豊さをくれます。キズは風合いに変わりますよ。」

これが僕の落とし文句。

 

とは言え、実際に住みはじめれば、特に新築のころは床のキズは気になるものだろう。

だからキズに対する処方は、つねに語り歩いている。

 

キズへの対処は、タッチアップ(キズに直接、塗料を塗ること)が現実的。

言いかえれば、無垢フローリングはどうしても傷がつきやすいので、気になるのであればタッチアップが必要になる。

 

自然塗料は、嫌な匂いもしないし、小さな子にも害がない。なので、おもむろに少量取り出して、タッチアップすればよい。

100キンで細いハケを購入していただき、先にちょっと塗料をつけて、キズに塗ってキッチンペーパーなどでスッと拭きとる。

これを2、3回くり返す。

 

凹みキズには、スチームアイロンがよい。

10秒間、ジュッ。これを3回〜5回繰り返す。

繊維が戻り、新しい凹みであれば、ほぼ元にもどる。

 

 

 

 

 

 

 

 

ワックスをかけておくことも、汚れだけでなく、細かなキズ防止に一役買ってくれる。

 

ただし、ワックスはホームセンターで売っているような樹脂系ワックスはおすすめしない。

樹脂系ワックスに比べれば少々、値がはるが、天然系ワックスがあるので、それがいい。

ネットでも買える。

 

スポンジなどですりこむ手間を惜しまないなら、ブライワックス(ミツロウ系)もいい。着色もできる。

それこそキズが風合いに変わります。

 

 

 

ただし、磨くと滑るようになるのでご注意を。

 

 

 

 

 

はだしでの生活であれば、まったく問題ありません。

 

すみごこちの良い無垢フローリング まとめ

・無垢フローリングはベトベト、カチカチ、ヒンヤリしない

・下地を含めた床厚を50㍉以上にすればフカフカとスコーンを防ぐ

・無垢フローリングには、自然塗料を使う

・キズ補修はさけられないので、タッチアップと自然系ワックスを活用する

参考になれば幸いです!

著者情報

阿部よしあき
阿部よしあきイエローチェア・ハウス代表
私たちの家づくりへのこだわりは、すべてはそこに住まい、暮らしの場を作られるご家族のためにあります。
ぜひ、一緒に工夫しながら家づくりを楽しみましょう!