安心な外壁を作る秘訣|漆喰は弱いの?

漆喰壁の強さは下地で決まる

漆喰壁には、下地の工法がいく通りかある。

主にラスモルタル下地(以下モルタル下地)とサイディング下地。

何を選択するかは、施主の希望というよりも工務店側の事情によって決まることが多いと思う。

 

最近、にわかに多くなってきた地震が気になるところ。地震のときに怖いのは、極端な話し、家がつぶれないかどうか、ですよね。

そこはまず大丈夫としても、次は家の損傷具合。

 

外壁が地震で割れるというような損傷は、漆喰ではなく下地によるものです。言わば漆喰はお化粧のようなもので、皮膚や筋肉がそのモルタルなどの下地にあたる。

損傷を抑えるためには、下地がいかに強いか?そこが問われるところ。

漆喰などの左官仕上げを希望するなら、建てる人も下地について、少しは研究してみても良いと思う。

 

東日本大震災の前、こんな質問をよく受けた。

「塗り壁の外壁は、割れたりしませんか?」

当時は、確かに大きなヒビの入った塗り壁の古い家が今より多く目立っていた。それを知りつつ、モルタル下地をすすめていたので、このような質問が多いのもうなずけた。

それには、いつもこのように答えていた。

「正直言って分からないところがあります。ですが、昔のやり方を進化させて割れないよう、下地の作り方には、工夫を加えています。」

 

震災を経験した今では、このように答えている。

「0とは言い切れませんが、割れにくいのは確かです。漆喰壁の下地としては、ベストです!あの震災で、今の作り方はほぼ影響を受けませんでしたので。」

 

モルタル下地のメリットは、すべての形状に対応できて、質感が良い。

 

そして何より、強固であるということ。

(デメリット→汚れが目立ちやすい、手間がかかるので割高)

 

良いモルタル下地を作る秘訣

漆喰の下地は、強いモルタル下地をおすすめします。

 

でも、施工はよしあしがある。なんと言っても、職人たちの丁寧さが大切。

 

 

ラス下(きずりとも呼ばれる木材を柱に貼る工程)

建物の四方に、板を横に張りめぐらせているものがきずりです。

 

等ピッチで均一に貼る。

 

切り口をたてに揃えてしまうと、そこが割れる原因になるので、平面では切り口を揃えない。

 

角は、角の柱まで一本で通す。

ここまでできていれば、丁寧な作業と言えます。

 

 

まずはこれで、第一工程が終了です。サイディングであれば、この時点でほぼ終了。

ところが、モルタル下地の場合は、ここから7工程控えている。

今回は強くする壁の話しなので、工程ごとの解説は飛ばします。

 

ラス網(基礎で言えば鉄筋の役割)

以前、動画にアップしたものを、まずはご覧いただければ幸いです。

前半部分にラス網の解説があります。

 

ポイントは、波型のラスメタルを使うこと。

 

それにより、モルタルが網のあいだにスキマなく入りこみ、一体となる。

 

ラスメタルにモルタルを塗り込んだ状態。下塗りとか、よごしと呼ぶ。

角についている穴のあいた棒状のようなものは、“コーナー”と呼ばれる。

しっかり形状を出すと共に、塗り込む壁の厚みを決める物差しでもあり、割れやすい角の割れ防止の役割まで果たす。

 

ファイバーメッシュ

ラスモルタルのデメリットである細かなヒビを防止するために、下地を作る工程の最後にファイバーメッシュを練り込みます。

 

ファイバーメッシュが塗り込まれ、下地がほぼ完成した状態。

 

この下の写真の方が、比較できて分かりやすいでしょうか。

左側の壁が練り込んですぐの状態。

中央の壁がファイバーメッシュを練り込んだ壁が乾いた状態。

右側の壁は、まだ練り込んでいない状態です。

この上に、もう一度薄塗りをして、モルタル下地の完成となる。

 

これにより、ヘアークラックと呼ばれる細かなヒビを防ぐことができる。絶対はありえないので、ヘアークラックは入るものと思っていただきたいのだが、少なくとも震災以降の建物でお目にかかったことはない。

(漆喰自体にも表面に細かなヒビが入ることがあります。お化粧の部分ですので、雨水は侵入しません。)

 

 

ここまでできていれば、割れることによる壁の中への雨水の侵入はまずありません。

 

汚れを防止する

これもデメリット対策のひとつ。

正直なところ漆喰の汚れには、随分と手を焼いてきた。真っ白なので余計だ。

 

現在、提案していることは二つ。

特に汚れやすいのは、北側の窓の両脇から出る雨だれの後。黒い筋になる。

防止策として、新たにサッシの下端に、特別な水切りをつけている。

外壁を伝わらないようにする工夫です。

 

通常の窓の下端は、枠がたいら。

 

水切りを追加した窓。

下の枠が出張っているのがお分かりでしょうか?

これにより、外壁を伝わることなく、雨水が切れていきます。

もう一つが、撥水剤を塗る。

表面だけに撥水させるタイプのものではなく、浸透性の撥水剤で、イメージとしては漆喰そのものに撥水性を持たせる感じ。

この撥水剤は、テカリなどを出さずに、漆喰の質感を変えないところが良い。

 

例えば、吹きっさらしに建つような場合は、オプションで2重に塗布することもおすすめする。

これで大分、メンテナンスは軽減されていると思う。

 

とは言え、今でも研究中。

 

強い漆喰壁を作るポイントまとめ

・下地はサイディング下地よりもラスモルタル

・きずりはレンガ貼りにして角まで通す

・ラス網は波系ラスを使う

・ファイバーメッシュを使う

・デメリット対策をする ファイバーメッシュ、サッシ窓水切り、撥水剤の施工

 

 

質感がよい丈夫な家を作りましょう!

著者情報

阿部よしあき
阿部よしあきイエローチェア・ハウス代表
私たちの家づくりへのこだわりは、すべてはそこに住まい、暮らしの場を作られるご家族のためにあります。
ぜひ、一緒に工夫しながら家づくりを楽しみましょう!