家の断熱と気密|茨城の新築住宅は何がいい?

断熱性能は計画と現場のバランスで決まる

打ち合わせも終わり、いざ現場がスタートすると、“断熱” が話題にのぼることは、ほとんどなくなる。

 

プロの領域なので、分からないということもあるだろう。

そして、長い家づくりの中でそこが見えているのは、一瞬だ。

家づくりを経験したほとんどの人が、実際の内容(現場の実態)を知らないままに終わったのではないだろうか。

でもそこにこそ、暮らしやすさにかかわる決定的な要因が潜んでいる。

それが断熱工事だ。

 

2021年(コロナで動きが見えなくなりつつあるが…)から、僕たちのような建築事業者には、施主への省エネ性能に関する説明が義務づけられる。

 

まずは基礎的な理解をしてもらおうと思う。

 

ただし、パソコンやソファーに座って学べるものは、まさに “机上の空論” になりがちだ。

事件は現場でおきている。

 

自宅の建設中はもとより、できれば契約前に計画と現場を照らし合わせて、納得することが大切だ。

 

性能が気に入らないとすれば、工事前ならグレードを上げたり、下げたりすることは

費用はかかるにせよ、注文住宅は容易でもある。

 

 

家のあたたかさは断熱材の違い?

家のあたたかさは、断熱素材の性能と厚みによって決まる。

なので、計画によって決まり、素材の違いで変わるものではない。

 

ちなみに断熱材ごとの性能とコストはこのようなバランス。

性能的には、石油系が高く自然系が低い。

コスパ的には、鉱物系がよく石油系が悪い。

*1/高性能グラスウール16K *2〜4省略

抜粋:SUUMO

 

自然系の性能が低いからといって、ダメというわけではない。

ある一定基準のあたたかさにするためには、性能の低い断熱材ならば、厚みを持たせればよい。

そんな仕組みだ。

 

「あそこの断熱材は〇〇だから、オッケーだね。」

という話にはならなくなる。

 

となると、どのように比較すればいいのだろうか?

 

家の性能を比較しやすいように、きちんと計算であたたかさを出すようになっている。

それが、UA(ユーエー)値と呼ばれる指標だ。

 

 

UA値とは? 茨城のあたたかさ基準

省エネと書いたとたん、涼しさのイータエー値や一次エネルギーの消費量もあり、小難しくなっていく。

でも、話を複雑化させたくないので、

あたたかさの話にしぼる。

 

UA値(ユーエーチ・建物の表面積1㎡あたりの熱が逃げる上限値)

= 建物から逃げていく熱合計 ÷ 家の屋根、基礎まで含めた表面積

簡単に言ってるつもりでも、自分でもすぐにはピンとこないほど、なんとも難しい。

 

もっと簡単に言えば、こうだ。

UA値=家の断熱性能の基準

 

UA値は、日本を8つに分けて、定められている。

数値が低くなればなるほど、あたたかな家。

1地域の北海道の家は基準が厳しく、なんと8地域の沖縄はない。

 

抜粋:ホームズ君

これによると茨城は、5地域になる。

寒くもなく、暑くもなく、日本の中間といったところか。

 

茨城の主な基準値は

UA値=0.87W/㎡K

 

つまり、数字上は0.87を下回れば下回るほど、断熱性能が高く、よりあたたかい家ということになる。

 

数値を計算する上で必要なのは、断熱材の性能値と厚み、そして窓の性能値などで、それらを掛け合わせてUA値を出していくわけだ。

 

発泡ウレタンを使えば0.8、グラスウールを使えば0.9、セルロースファイバーを使えば1.0、という単純なものではない。

しつこいようだが、何を使っても、理論上は同じあたたかさにできる。

 

 

 

 

イエローチェアハウスの標準仕様

イエローチェアハウス の標準構造がこちら。

 

標準仕様で、3地域に対応する性能になっている。

 

さらには、注文住宅ゆえ、同じ断熱材でのグレードアップが簡単だ。

具体的には、断熱材の厚みと窓を変えるのがおすすめ。

断熱材を100㍉に変えると、UA値は0.50(計算済み)になる。

窓をトリプルサッシに変えると、どうだろうか、0.45くらいになると思う。

 

計画通りの断熱性能にするためのキモ

もう家のあたたかさは、断熱材の種類によって、変わるものではないことがお分かりいただけたと思う。

 

そして、実は計画された家に、あたたかさの影響を与えるのは、現場での工事ほかならない。

計画数値を上回ることはあり得ない。

ところが、マイナスに転じる要因はいくらでもある。

どれだけ穴埋めして、計画に近づけられるかがキーだ。

 

施工上のデメリットをどのように対策しているか、が大切だ。

そこにこそ、各社の技術が問われる。

 

断熱材の部位別工事解説(=デメリット対策)

内断熱は、筋交やコンセントなどの壁の中に隠れる障害物をさけながら、充てんしていく必要がある。

そこは、丁寧に工事を進めないと、必ず断熱が欠損する。

 

中と外の空気を自由に流動させないこと(高気密)にも、あたたかさのポイントがある。

例えるならば、羽毛の布団一枚では、肩まわりはスースーするが、そこに毛布なり一枚加えるだけで、ぬくもりはぜんぜん違う。

つまり、気密の各工程が、毛布にあたるわけだ。

 

断熱材と半透明のシート(気密シート)が、外に面した壁に取付られる。

写真で見ると、白く見える断熱材は壁のてっぺんまで届いている。

この後、白く見えるところすべてに、ボードでおおうように貼るので、気密が高まる。

丁寧に工事されているならば、現場はきれいに見える。

よい工事は、五感でも感じることができる。

 

細かい部位を見ると、

足元は、白い気密テープでシートをしっかり固定している。

この上に、床材がのるので、足元からスースーすることはありえないことが、お分かりいただけると思う。

 

こちらは、コンセントがつく壁の中のボックス。

半透明の気密ボックスがセットされて、配線が出ているところにはコーキングがされているのがお分かりだろうか。

 

吸気口は、木枠を取り付けてから、ダクトを固定し、フチにも断熱材をつめる。

(この後、気密テープをハスに貼る)

 

このパッキンは外用のものだが、必要であれば中でも代用する。

 

これが出来上がり。

 

グリーンのビニールは、気密シート。

気密シートの左側が、1階建て(下屋)で、右側が2階建て部分。

下がったシートの少し上に、1階の天井が貼られる。

このように2階建ての建物で、1階の屋根がぶつかってくる場合、1階の屋根裏と2階の床のふところがつながる。

すると軒天井には通気孔があるので、冷たい空気が家の中を自由にいききしてしまう。

それをさけるためのバリヤーとして、気密シートを垂らし、のちのち天井に巻き込んでいく。

 

屋根裏につながる間仕切りの壁も同様。

部屋と部屋の間には10㌢程度の空間があるが、天井につながっていて、あたたかい空気が天井裏へと抜けてしまう。

それを防ぐために、天井の高さに、木材(気流止め)をいれる。

配線が3本貫通している木材が気流止め。

配線が貫通しているスキマは、この後、コーキングを埋めて処置する。

 

メーカーの推奨する施工マニュアル以上のことを実施する必要がある。

 

これらのことは、施主に見せる資料には見えてこないものの、必要不可欠な内断熱のデメリット対策とも言える。

 

これでようやく、提示した数値に近く。

ウソのない工事で、コスパの高いあたたかな家になる。

グラウウールは安価で扱いやすい素材だけに、現場での細やかな対応が必要なのだ。

 

他の断熱材も同様に、なんらかの欠損部分があるもの。そこには必ずデメリット対策が必要になる。

 

 

断熱工事は誰の仕事?

断熱工事はどの職人さんが受け持つかご存知だろうか?

内断熱であれば、たいがいは大工さんの仕事になる。

 

でも、彼らの本来の仕事は、さまざまな場面で木材を加工し微調整し、組み込んでいくこと。

まさに木造建築の主役をつとめる。

大工さんの腕前ひとつで、家のよしあしを決定すると言っても過言ではない。

 

断熱材をスキマに入れていく工事は、本来、大工さんの仕事ではないことが、お分かりいただけるだろうか。

実は、工務店側にとっては、大工に発注するメリットは大きい。

 

内断熱(充填断熱)の材料は、他のものに比べれば安価だし、施工も大工工事の中に組み込んで一括発注すれば、コスト削減につながる。工期のムラをなくせることも、すばらしく都合が良い。

内断熱が採用されることが多い理由にもなっている。

 

逆に彼らの気持ちになれば、モチベーションや使命感は、低くなりがちだ。

さらに、冒頭で述べたとおり、断熱工事は一瞬で見えなくなる。

(いい工事をしよう!)と思っても、相手はもうからない余計な仕事。

面倒なところに魔がさすことがでてくるのが、人情というものだ。

 

だから、イエローチェアハウスでは、床以外の断熱工事を専門の職人に発注している。

いつでも均一で、前述した写真のように現場の細やかな対応ができているのは、専門の職人さんの功績だ。

いつなんどきも、胸をはって現場を見せられる。

 

杉フローリングは柔らかな歩行感

「あたたかく過ごしています。冬でもハダシですよ、うちは!」

などと、お声をかけていただくことも多い。

 

結果がすべてだが、家づくりは過程がモノを言う。

 

断熱のまとめ

・断熱は、断熱材の性能よりも、計画による

・茨城県のあたたかさの基準はUA値0.87 下回るほどあたたかくなっていく

・あたたかな家にするには資料よりも現場 断熱欠損と気密が大切

・グラスウール工事は断熱の専門職人に実施してもらう

 

余談

お会いして間もない方に

「こちらの家の断熱材はなんですか?」

と聞かれることがあります。

 

その質問は、(暖かいですか?)という意図でしょう!?

シンプルな質問ほど答えにくいものはありません……。

 

「はい、グラスウールです。」

と言ったとたんに、断熱材で性能が決まると思っている人だとしたら、顔がくもるかもしれない。

 

もしくは言い訳がましく、

「えーと、断熱材よりも計画が大事なんですけど、いや、グラスウールなんですが、グラスウールでも高性能のやつでして…、そう!その前に8.5㌢の厚みです。ですので、全体の計算によると大体の感じで、茨城のUA値が0.87に対して、0.54です!秋田や青森でいけるので、けっこう暖かいんです!!UA値って、ご存知で?」

 

なんて、切り返してしまえば、答えになっているようないないような、しかも理屈っぽくて悪印象を与えかねない。笑

 

その方がどれくらいリテラシーを持っているかがミソなので

そこまで興味を抱いていない段階であれば、

いきなりそのような頭でっかちな返答を返すと、

「わかりました(もういいです)。」

という反応になるかもしれませんよね!笑

 

反対に、勉強熱心なお客さまには、僕よりも知識豊富な方も実際にいて、逆ツッコミが入る風穴を開けてしまうことになる!

これはこれで、知らない工法も当然あるわけで、しどろもどろに答えていくと

「わかりました(だめだ、こりゃ)。」

となるかもしれない……。

 

なので、いつも言葉がでてこない。笑

 

面倒をさけ、優秀な営業マンほど、

「うちは〇〇を使っているのであったかいですよ、大丈夫ですよ。この資料をあとでご覧ください。」

という返答(のはず)です。

 

人はシンプルさを求める。

 

本質はそこではないと思うがゆえ、余計なことを口走る。

また負けてゆく…笑

いいさいいさ、うちは正直さで勝っていく!笑笑

 

冬はあたたかく

夏はすずしく!

著者情報

阿部よしあき
阿部よしあきイエローチェア・ハウス代表
私たちの家づくりへのこだわりは、すべてはそこに住まい、暮らしの場を作られるご家族のためにあります。
ぜひ、一緒に工夫しながら家づくりを楽しみましょう!