人生は、だんだん美しくなる。~ 映画『人生フルーツ』~|Yellow’s Spirit 2018-06

暮らしの場作りとしての思いを寄せて……映画『人生フルーツ』と楽日荘のご紹介

風が吹けば、枯れ葉が落ちる。
枯れ葉が落ちれば、土が肥える。
土が肥えれば、果実が実る。
こつこつ、ゆっくり。
人生、フルーツ。

この一節は、映画『人生フルーツ』の中で、ナレーションをしている樹木希林さんが、繰り返し唱えるフレーズです。

映画『人生フルーツ』は、雑木林に囲まれ自給自足に近い生活を営む建築家の津端修一さんと妻の英子さんの“暮らし”を丁寧に綴ったドキュメンタリー映画です。

イエローチェア・ハウスは、来る6月24日(日)に石岡市(旧八郷町)で行われる『人生フルーツ』の上映会に協賛することになりました。

そこで今月のイエローズ・スピリットは、映画『人生フルーツ』とその上映会会場となる「落日荘」。さらにはその落日荘をセルフビルドされている岩崎ご夫妻についてご紹介いたします。

暮らし方と生き方への問いかけ

修一さんと英子さんは、約300坪のお庭を彩る70種の野菜と50種の果実を育てながら、自給自足に近い暮らしを、こつこつ、ゆっくりと重ねてきました。

修一さんは日本住宅公団で活躍した高名な建築家。1960年代に自ら手掛けた高蔵寺ニュータウン(名古屋近郊)では、自然の地形を可能な限り残し、雑木林の中を風が通り抜けるようなプランを打ち出しました。ところが経済や効率が重視された時代にその考えは採用されず、戸数確保を優先させた無機質な箱が並ぶ団地になってしまいました。そこで修一さんは、そのニュータウンの中に土地を買い、追い求めていた暮らしを自らの生活を通して実践されてきました。

イエローチェア・ハウスは、創業34年目を迎えた今年、「家づくりから“暮らしづくり”へ」というテーマを掲げ、建築業者から生活提案業者を目指していくスタートアップを切りました。まさしくこの修一さんと秀子さんの暮らしは、私たちが提案する暮らしのひとつの形と言えます。

「家は暮らしの宝石箱でなくてはいけない」

映画の中でも紹介されているモダニズム建築の巨匠ル・コルビュジエ(1887-1965)の、この言葉もヒントにしながら「暮らしの場」としての家づくりについて、改めて多くのみなさんと語り合う好機としたいと思いますので、ぜひお越しください。

『人生フルーツ』 
ナレーション:樹木希林/プロデューサー:阿武野勝彦/監督:伏原健之/編集:奥田繁/2016年/91分 c東海テレビ放送

世界を、そして地球を感じる楽日荘

今回、会場となるのは建築家・岩崎俊介さんと美佐子さんご夫妻のご邸宅なのですが、このお家もまた、ぜひみなさんに観ていただきたい、すばらしいおうちです。

日本建築家協会が選定する「第12回 2011年度 JIA 環境建築賞 住宅部門」で最優秀賞を受賞されているのですが、なんとセルフビルドの住宅なのです。つまり、瓦葺など特殊技能が必要な仕事以外はすべてご夫妻の手で作られているんです。

着工から今年で約16年が経つそうですが、実はまだ途中。おうちだけでなく、自給自足に近い暮らしもあいまって、まさしく”茨城の人生フルーツご夫妻”ともいえる場所での上映となります。

当日は、落日荘を作ってきた思いやそのコンセプトなど、岩崎さんの興味深いおはなしを上映後に聴けます。

「この小さな一点から世界を、そして地球を感じたい」

こうした思いで作られたおうちは、方角や地形、さらには緯度まで意識したつくりになっているのだそうです。

つまり、○○市△△という住所は、地球の中に在る一点というだけでなく、その点の線上には違う地域や国が在り、地球は繋がっていることを感じ取れる家、そして暮らし……。そうした設計理念のもと、地域の建材を使いながら手づくりしている木組みの家での暮らしは、この地球上に家を建て、そして暮らすことの根本的な考えが揺さぶられるようです。

イエローチェア・ハウスでも早くから自然塗料や地元の国産材を使い、地球や環境への負担の少ない、サスティナブル(持続可能な)家づくりに取り組んでまいりました。

当日は、社員もほぼ総出で参加します。岩崎さんからたくさんのことを学び、これからの家づくり=暮らしの場づくりに活かしていければと願っております。

今月号のタイトル人生は、だんだん美しくなる。は、映画『人生フルーツ』のキャッチコピーなのですが、かねてよりイエローチェア・ハウスは自然素材の経年経過による味わいや美しさの魅力をお伝えしながら、丁寧に手入れをしていく暮らしの素晴らしさを家づくりに活かしてきました。

そこで、今月号はこんな言葉で締めてみます。

人生は、そして家は、だんだん美しくなる!

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