暮らしの新しい「物語」|Yellow’s Spirit 2018-07
私たちの暮らしの場づくり、家づくりの物語を語らい、広めていく人たちとの繋がりを求めて……。NPO「環~WA」のご紹介も併せて。
地球が悲鳴をあげている
この原稿を書いているのは、ちょうど七夕の日。西日本で豪雨が降り注ぎ、甚大な災害のようすが次々と流れてきます。被災されたみなさんには心よりお見舞い申し上げます。
もう「観測史上最大」とか「観測史上初」というフレーズにも、あまり驚かなくなりました。それほどの異常気象が続いています。地球規模でいえば、無謀な森林伐採や化石燃料に依存した暮らしが地球温暖化を促進しているという指摘は、随分前からなされています。元来、雨が多い日本では森が雨水を保持してくれていましたが、山と共生してきた暮らしが大きく変化し、森林の荒廃が進んでしまったことで、大きな水害や洪水の遠因になっているとも言われて久しいです。
人の心を動かす物語の重要性
圧この一節は、映画『人生フルーツ』の中で、ナレーションをしている樹木希林さんが、繰り返し唱えるフレーズです。
ならば、国産材を使ったほうが良いのは明白のはず。ところが、人は理屈だけでは動かないものです。森林ジャーナリストの田中敦夫氏がYahoo! JAPANニュースでこのように書いています。
(以下、『国産材、本当に使いたい? ~木づかい運動の裏にある本音~』より引用)
ところが、よりによって、それ(国産材の普及推進)を仕事として手がけている人が、本当に国産材を使いたいのか自問したら、迷う、いやもっとあけすけに言えば「使いたくない」というのだ。
先日も弊社の知人の木こりさんが、輸入木材を多用するメーカーで家を建てたと聞き、愕然としたばかりです。田中氏は、このように記事を締めています。
自分たちの手元に届くまでのドラマを知ることで、その木がいとおしくなる。そして外材とは違った日本の木ならではの機能や特徴を見聞きしたから不具合があってもクレームにならない。
これらのことを自覚して、そんな利点を一般消費者に伝えることから国産材の振興に取り組むべきだろう。
イエローチェア・ハウスでは、発足当時から「家づくりには国産材を使おう」という目標を掲げて取り組んできました。その手応えを感じつつ、もっと包括的な取り組みを進めているところです。
そのために同じような取り組みをされているかたがたと、もっと繋がるべく、暮らしに取り組む「物語」をことあるたびに紹介して参ります。
ということで、今回はこちら。
自然に還る いのちの循環 人の環 里の和
──いのちは どこから生まれ なにに育まれ どこへ還ってゆくのでしょう 生物多様性に満ちた里山の「生命のつながり」に気づき里山に継承されてきた自然と共生する「くらしの知恵」を学ぶ 自然の叡智を体験的に知る環境教育の場として環~WAを拓きました
これは、NPO 環~WAのホームページで謳われている設立理念です。茨城町の里山で様々なフィールドワークをシェアしながら、そこで得られた気づきや生まれてくるアイデアの環を広げ、次世代の里山ライフスタイルを創造されています。イエローチェア・ハウスも茨城町にあるので、とってもご近所さん! 主宰されている大和さんご夫妻はオフグリッド・ハウス(電力会社の送電網を切り離し、自家発電で電気を自給自足している家)をつくり、そこに住まわれながら里山整備はもちろん、オーガニックな野菜づくりにも精通されているので、本当に多くのことを学ばせていただいています。
常日頃からサスティナブル(持続可能)な暮らしに関心が高い弊社代表の阿部は足繁く通い、一緒に畑を耕したり、下草刈りをしたり……。敷地内の古い養蚕小屋を改装したオーガニック マルシェカフェ「ひ・ら・く」では、茨城町地域おこし協力隊の川島裕樹隊員と自然農法に取り組む米沢直人さんが、採れたての新鮮な野菜で腕を振るってくれます!
里山を通り抜ける風と樹々の息吹を感じられる素敵なところなので、ぜひ足を運んでみてください。なにかしら、新しい暮らしの「物語」を感じ取ってくださることでしょう。
様々な物語を語りあう
イエローチェア・ハウスも、ささやかながら家づくり、暮らしづくりの「物語」をお伝えし、共感してくださるお客さまと巡り合ってきました。本当に嬉しい限りです。
先月号でもお伝えしたように6月24日に石岡市旧八郷地区の「落日荘」で開催された『人生フルーツ』上映会に私たちは協賛いたしました。自ら奥様と「落日荘」をセルフビルドされている岩崎さんは建築家でもあるわけですが、これまで世界各地で暮らしてこられたご経験から「地球を感じ、世界と繋がっていることを意識した家づくりと暮らし」を実践されています。岩崎さんの言葉から、世界の現状に無自覚に暮らしてしまうことへの警鐘と、この茨城の地でいかに暮らすべきかという命題をいただいたと思っています。
イエローチェア・ハウスが国産材を仕入れている協和木材株式会社さまは、地元八溝山系の木を上質な木材として製材してくれています。そのお話を岩崎さんにお伝えすると関心をもってくださいました。
そして強く思ったのです。こうして思いを繋げていけば、家づくりの木材をはじめ、様々な原料がどのような経緯でみなさんの暮らしの場に届くのか。その「物語」を意識していけるのではないだろうかと。
イエローチェア・ハウスでも、一層サスティナブルなハウスメーカーとして、みなさんと共に物語を語り、実践してまいります。
今秋には、イエローチェア・ハウスが使っている木材のルーツを訪ねる『森からのツアー』を開催します。ぜひご参加を!
NPO 環~WA
オーガニック マルシェカフェ ひ・ら・く
茨城県東茨城郡茨城町下土師(しもはじ)1821 080-5445-2590
協和木材株式会社
福島県東白川郡塙町大字西河内字鶴巻田10 0247-43-0272