丁寧に暮らすための真のメンテナンス|Yellow’s Spirit 2019-01

このイエローズ・スピリットがみなさんにお目にかかるのは、今号が初めてなので(遅まきながら)本年もよろしくお願いします。
今年、平成の三十年が終わります。昭和が明治のような遠い昔の話になってしまうのでしょうか? (スタッフは全員昭和生まれですが……)いずれ平成生まれのお施主さまにも出会うことでしょう(笑)
永く、世代を超えて暮らしていけるよう、私たちは家づくり&暮らしの場づくりに取り組んでいますが、自然素材を豊富に扱うイエローチェア・ハウスの家は、住み始めてからのお手入れ(メンテナンス)が大変重要になります。
そこで今号ではここ数年間、イエローチェア・ハウスが取り組んできた「アフターサービス&メンテナンス」について御紹介いたします。

正々堂々のアフターサービス

「私がまず気をつけたのは“嘘つかない・ごまかさない・言い訳しない”ということ。私たちの落ち度なのか避けられない自然劣化なのか……症状から原因を探り、お施主さまにしっかりと御説明する。そして無料対応……つまり私たちが費用を負担するべきか、お施主さまに御負担いただくか、きちんと納得していただく。変にへりくだったり、こっそり無料で対応したりせず、正々堂々とアフターサービスに取り組むことを心がけました」

平成28年2月からアフターサービスを担当している入澤は、元 ヨーロッパ直輸入の家具専門店経営者。同封の『THE YELLOW TIMES』では、ハウスドクター・イリサワとして「おうちと暮らしのヘルシーメソッド」を連載中。

弊社代表の阿部と出会ったのは平成19年。イエローチェア・ハウスが最初に手がけたおうちを、新しいモデルハウスとして公開するために、イギリスの雰囲気に似合う家具を探していた阿部が電話をしました。

「最初、モデルハウス内で展示販売するので“貸してください”って言われたんです。でも『借り物だからいいやという感覚では売れませんよ。阿部社長が本当に気に入った家具を買い取って勧めていただいたほうがいい』と言って断りました。そうしたらきちんと買い上げてくれまして……」

このようにきちんと筋を通す入澤ですが、その物言いと物腰は、とても柔和なオジサマ、もとい紳士です。

家具屋からの転身

しかし数年後、さまざまな事情から入澤は家具店をたたみます。そのとき、彼はイエローチェア・ハウスのことを思い出します。

阿部代表は「あれからたくさんのおうちをお届けしてきて、いま必要かつ足りないのは、引き渡し後のアフターメンテナンスだ」と思っていました。店をたたんだ入澤にとっても、阿部代表にとっても、共に渡りに船だったわけです。

「規模も勝手も違う家具と家。でも自然素材を扱うイエローチェア・ハウスのおうちならば、自分の店舗で取り扱っていた自然素材(パイン材)の修繕経験も役立つのではないか。そもそもイギリスやヨーロッパの家や家具が好きという、大切な共通項がある。ならば、どうにかなるんじゃないかなぁと(笑)」

ところが、現実は甘くなかったようです。過去の対応に不満を抱えていたお施主さまからの叱責。自分がしたことではないのに頭を下げて回る理不尽さに胃を痛め、塞ぎ込むこともあったと……。

お客さまに軸をおきながら
あたりまえのことをしっかりと

ところが、それこそ“年の功”(笑)

その経験と知恵と誠実さをもって、少しずつお施主さまの信頼を取り戻し、新たなお施主さまには、自然素材を取り扱うときの注意点をきちんと伝えていくよう、プランナーとの連携も強めていきます。

「これって、あたりまえのことなんですけど、実は小さな工務店はやれていないところが多いんです。大手は大手で逆にほとんど有料ということが契約書にびっしりと書かれています。でも職人さんに頼まないでもやれること……職人さん高いんでね……お施主さまが自分でお手入れできること、結構あるんです」

前号の『THE YELLOW TIMES』でも御紹介した「出隅の漆喰剥がれ&キズ」の修復などは、無料で修繕できるケースならば、ハウスドクター・イリサワが手がけています。

ザ・クイック・メンテナンスについては、こちらを御覧ください。
アフターサービス|ザ・クイック・メンテナンス

また自然素材の床材は傷つきやすいのですが、お施主さまでも簡単に修繕できるので専用塗料を無料でお渡ししつつ、やり方を覚えてもらうことも。

ビルダーと住まう人の真のメンテナンス

ビルダーがその責任を果たすべきアフターサービス。そこに住まう人のお手入れというアフターメンテナンス。

どちらが欠けても経年とともにその変化を愉しむような暮らしは難しいでしょう。使い込んだからこそ生まれた手垢などの色変化を単なる劣化と考えてしまったり、それゆえに新品のようにピカピカに戻さなければいけないという発想よりも、家に語りかけ共に歳を重ね、経年の変化の味わいを愛でていく……そのような発想を元にした丁寧な暮らしこそが真のメンテナンスに繋がるのではと考えます。

これからもイエローチェア・ハウスでは、お施主さまのおうちと暮らしを “一緒に手を携えて” 手がけて参ります。そうして平成の次、またその次の年号が改まり「これ平成時代に建った家だって! 古いけど味わい深いね! かっこいいね! 素敵だね!」というふうに未来の子どもたちが驚き、喜んでくれるような家にしていきたいものです。